川も藪も近くにある田舎に住んでいる
控えめに言っても田舎だし、数十年経てば限界集落となっていると思う
そんな場所だからこそ、彼女たちはやってくる
【蚊】だ
例外なく土海にも居るとは思うが、住んだことないので分からない
でも『田舎は蚊が多いもんね!』と胸を張って言える
たぶんだけど
部屋を暗くし、睡眠の準備万端に時に聴こえる羽音
聞きたくもないのに聴かされる、そう効かされる
まさに効果抜群
一回その音を聞いてしまうともう逃れられない
少し脚に何かが触れただけでも過敏に反応し、あまつさえ幻聴すら聴こえてくる
例え最初の羽音が聞き間違いだったとしても、それは充分に呪いだ
※呪い(まじない)ではなく呪い(のろい)なのでお間違えなく
古来より受け継がれている、呪いの真髄は相手に思い込ませること、思い込ませることさえできれば呪いはほぼほぼ成功なのであると
太古の昔に考え尽くされたような事例が今なお効果を発揮している
気の持ちようとはそれほど大きいものなのである
メンタリズムなどでもある、相手に想像させるテクニック
蚊ですらそのテクニックを駆使してきている
残念ながらこの部屋には殺虫剤はない
耳元に寄ってきたときにやっつけるのみ
チャンスは多くはないだろう
1回目のチャンスをものにできるよう、祈らざるをえない
呪いからの解放を、呪い(まじない)と手のひらにこめて